第28話 ネタバレ
【スチェータ男爵side】
「中央の連中がデタラメな噂を流してるだけでしょう」
「そうだなあいつらは皇帝に忠誠を誓うだなんぞ口先だけの連中だからな」
(確かフェーズ公爵は陛下に男を差し出したと・・・これはいいチャンスだ。良い顔をしておいて損はない)
(皇帝に気に入られれば俺だって第2のフェーズ公爵になれるんだ。彼は調子に乗り過ぎて皇帝の機嫌を損なったに違いない)
(あのマヌケなエンビダですら伯爵なのになぜこの俺が男爵なんだ。あいつと俺の違いは爵位だけ・・・そうだぞ怯えていたら何もできない。この混乱に乗じて爵位の格上げも狙える)
「執事」
「はい」
「城全体と皇帝陛下がお泊りになる部屋を最高級品で装飾しておけ」
「かしこまりました」
「予算はいくらかかっても構わん。ちょうど集金の時期だから・・・そうだついでにエンビダ伯爵にもこのことをこっそり流せできるだけ大袈裟にな」
「はい!旦那様!」
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【ユリアside】
昔、ナスラン王国は北の大陸で寒く乾燥したところだった。そのせいで農業は発展せずおかげでいつも食料不足であった。そのせいかしらナスランで出会った人々の顔はどこか暗かった。
(こんな状況で食べ物に暴利をつけるだなんて)
帝国の首都ミラーを出発してから4日目の夕方スチェーテに到着した。
「陛下!こんなところまで足を運んでいただき光栄でございます」
「とんでもない急な訪問にも歓迎してくれて感謝するぞ」
「恐縮です。陛下にお越しいただけてこの土地にも祝福の光が差すでしょう」
「・・・お前も知ってると思うが私は即位してから休む暇なんてなかった」
「もちろん存じております!」
「スチェーテの冬は静かで絶景を誇るという噂は何度も耳にしている特にここの木は不思議な香りを宿しているらしいが・・・」
「ええそうです。この土地の名物でございます。そこで陛下がお泊まりになるお部屋は特別にスチェーテの木で飾りつけました!」
「それは嬉しいな」
「スチェーテは木のみならず石も有名でございます。つるつると光輝く上に柔らかい感触が・・・」
(男爵の城にしては・・・大層なものだね。なんて贅沢なのかしら)
「素晴らしい城だな」
「お・・・お気に召されましたか?」
「うむ」
「ど・・・どうぞ中へご案内いたします」
(民は飢えているというのに・・・)
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「外とは違い中は暖かいな」
「あまりにも古い城でしたので増築する時色々と手を加えました。大事なお客様がいらっしゃる予感がしたんでしょうね!」
スチェータ男爵は(喋り過ぎたか?)と不安になりユリアの顔色を伺う。
(よかった・・・あまり気にしてないようだな。俺を罰する気ならわざわざこんな面倒なことはしないだろう)
「食堂へご案内いたします」
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「陛下もしよろしければこの記念すべき日に相応しいお酒をお持ちしたいのですがいかがでしょう」
「ああ楽しみだな」
「では・・・」
スチェータ男爵が部屋を出て行くとユリアがキョロキョロと見回す。
「・・・・・・」
「フェリックスこっちへ・・・この城にある装飾品はどこから持ってきたのかその価値の確認を頼めるか?」
「お任せください!」
「では頼んだぞ。男爵に気づかれないように」
「もちろん」
(腐敗したにおいがぷんぷんするわねどうにかしないと・・・)