第27話 ネタバレ
城でのほぼ全ての重要な職務にはユリアが定めた国の出身者が選ばれていた。なのに他国の出身であるシリルが城の要職に任命された。
『演技をしているのではないかとお考えになったことはありませんか?』
(シリルがそう思うのも無理ないわ。周りからは敵対視されて余裕もなかったはずだし、だからあんな笑顔が作れるとは思わなかった。)
(正直、曖昧な笑みを浮かべると思ったのに)
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「気軽に1人で行ってくるつもりだったが・・・」と睨み合う二人にユリアが話すと
「「それは絶対なりません!」」
声を揃えてユーストとフェリックスが言う。
(・・・こういう時だけ意気投合してるよね)
ユースト「今回は先日と違って遠出されるのになぜ用心棒も付けずに行こうとするのですか!」
フェリックス「そうです!まさかこの人はよくてボクはダメというわけではありませよね?」
(・・・フェリックスはこの前イースターの時ユーストが私についてきたことを根に持っている。ユリアではなくユーストに。
彼は1人でユリアに仕えたユーストのことを卑怯な人間だと貶していた。ただでさえフェリックスはユーストが嫌いだもの・・・)
ユースト「それに今回の件は我々が介入しなかったら他の者も反対したはずです」
「そうです!そもそもベヌース伯爵がいけないんです。これしきのことをわざわざ陛下に報告しなくても・・・」
フェリックスの言葉にユリアは首を横に振る。
「シリルは色んなことを考えた上で報告したんだ。無論、私に苦労してほしくないからそう言ってくれているのはわかってるぞ」
(シリルのことが嫌いなせいもあるでしょうけど)
「だがこの件については確認が必要なことだわかってくれ」
「・・・はい」
「そろそろ出発しよう」
「ですが遠いところに馬車もなしに行ってはいけません!」
「・・・」
(小説の中での彼女はここまで格式張ることはなかったのに)
(特に皇帝の座に就く前や直前はなおさらだった。あの時はユーストと2人きりで行動することが多かったわね。ユリアはじっと机に向かうようなタイプではなかったから・・・
その後はすぐ征服戦争に出向いたし。この頃は彼女の人生の中で平穏な時期ではあったわね)
「陛下、今マルカス公爵との昔のことを思い出してるんでしょ?」
「!」
「なぜそれを・・・」
「陛下はいつも昔のこと・・・特に公爵とのことを思い浮かべる時そういう顔をされますから・・・」
「・・・そうか」
「・・・」
(初耳だな。そもそも本来のユリアと私は別人なのにそんなところまで似てるなんて不思議だわ。それにユーストに対する感情も彼女とは違うはずなのに)
「それより・・・スチェータ男爵をいかにして罰するおつもりですか?」
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【スチェータ男爵side】
「何!?陛下がこちらにいらっしゃるだと!?」
「ええ先ほど首都から連絡が入りました」
「いったいなぜ・・・」
「何者かが陛下にスチェーテの冬は過ごしやすいと話したようです」
「どういうことだ?」
「療養のためだと・・・スチェーテの木は特別ですからね!それに冬は絶景も見られますし」
(納得はいくが曖昧な理由だな・・・まさかな・・・)
「それはないだろう・・・」
「何がですか?」
「お前も知っているだろ?2ヶ月前フェーズ公爵をご自身の手で処刑したことを」
「ですがその件は旦那様やエンビダ伯爵は無関係だったのでは・・・?」
「それはそうだが・・・なんだか嫌な予感がするんだ」
「まさかこんな辺境の地のことまで気にするわけないでしょう。首都の近くだけでもフェーズ公爵よりひどい輩がごまんといるはずです」
「それもそうだな。フェーズ公爵は処刑されたがただの陛下の気まぐれかもしれない」
「そうです!皇帝がイカれたという話は有名だったではありませんか」
「やはりそうだよな?」
「短期間で正気に戻るなんて不可能です。中央の連中がデタラメな噂を流してるだけででしょう」