第39話 ネタバレ
『ビゲー子爵がカジノを買収したそうです。皇太子を騙して安く買えたからいいのでは?』
公女は馬車に乗りながら先ほどの報告を思い出していた。
(あのバカ!お金に目がくらんでそんなことを!皇太子を抑圧することに比べたらそんなのゴミ以下よ!
いったい誰なの?貴族からの抑圧に耐えきれず姿をくらましている皇太子がそんなことするはずがない。だれかが味方についたに違いない・・・高級品を狙うのもきっと皇太子であろう)
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「ようこそ公女様!」とミエールが迎える。
「遅くなったわねミエールお嬢様」
「とんでもございません」
「これなんだけど。クランベル地方の夏用の紅茶よとっておいてもらったの」
「そんな珍しいものを・・・ありがとうございます!こちらへどうぞ」
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「そのブローチとてもお似合いよ」
「オスカー様からいただきました」
「彼が?センスがあるのね」
「こんなダイヤは初めてみました!」
「実はそのダイヤあなた以外にも持っている人がいるのよ」
「えっ?」
「オスカーも似たものを持っていたの聞いたらミエールお嬢様を想って買ったそうよ。お揃いだったのね」
「オスカー様がそんな・・・!」
(ウソに決まってるじゃない。あの売春婦の娘があげたものよ。私がそれを許せるわけがない。もう1つ用意すればペアになる。
それよりミエール・・・オスカーからのプレゼントではないことを知っていながら喜んでる。さすが貴族の一員ね上の人には合わせるのがルールよそれに比べて伯爵は・・・どうして売春婦なんかを連れてきたのよ?
顔が飽きたら捨てるような女と再婚なんて・・・そんな伯爵家と手を組まないといけないこっちの身にもなってよ!)
「ひどいわね。身分があんなだと挨拶にもこないなんて。ミエールお嬢様が大変よね」
「あ・・・公女様はお会いしないほうがいいかと・・・」
「ミエールお嬢様に対する態度はさぞかしひどいのでしょう。私から一言お伝えします。アリアお嬢様を呼んできてちょうだい」
「はい」
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「挨拶が遅れて申し訳ございません」とアリアが赴いた。
「あら、どうも」
(意外とマナーはあるのね。2年もいれば挨拶くらいはできるか。それくらいかしらね。)
「座ってください。具合でも悪かったのですか?」
「いえ・・・公女様の許可なしに挨拶に来れません」
「そうね・・・あなたの出身を忘れていたわ。伯爵家を悪く思っているという噂を聞いたけど・・・どうかしら?」
「家紋の恥とならぬよう努力しているだけです」
(どうせあんたとミエールが作った噂でしょ!アニー・・・公女が来たなら教えなさいよ!最近私が1人でいる時間を増やしてこうなったのね・・・大丈夫・・・挨拶だけして戻ればいい)
「くれぐれも汚名を被らないようにしてくださいね」
「かしこまりました」
(あの話し方・・・私の前で緊張しないなんて・・・私をナメているの?)
「味はどう?」
「・・・・・・」
(高級な紅茶の味があなたにわかるかしら?)と公女がしかける。
アリアは紅茶をのみ「とても美味しいです」とこたえる。
公女は(美味しいと言っておけばいいとでも思ってるのね)と嘲笑う。
「特有の苦味とわずかに酸っぱさも感じられます・・・クランベル地方の夏用の紅茶ですね。この紅茶は夏にぴったりだと聞きました。これを頂けるなんて光栄です」と完璧にこたえるアリア。
「名前はご存知なのね・・・」
「はい。お砂糖はスプーンの半分でも充分かとこういった飲み方もあるのですね」
(砂時計を持ってきてよかった)
「ふん、挨拶もできたしもう戻っていいわ」
「ありがとうございました」
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「ふぅ・・・」
(危うくバカにされるところだった。悪意に満ちた目イシース公女・・・危険人物ね)
「お嬢様!すみません~!」とアニーが謝る。
「気にしないでいいのよ些細なことで呼ばないでと言ったんだから・・・」
「お嬢様~!あっ、そういえばお兄様から連絡がありました!」
「アンドリューから?」
手紙には
【フラワーマウンテンの主人と取引いたしました。価格は既存の10倍で5%分を先行販売いたしました】と書かれていた。
(いい感じ、人が集まってくるはず)
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「どこで砂糖を手にいれた?」
「皆にもわけるべきだろう?」とカフェ【フラワーマウンテン】に客が詰め寄せる。
(自分たちで独占して下級貴族に高く売ってたくせに)と店主は思う。
「たまたま売ってくださる方が現れて・・・」
「いいから買わせろ」
「確認いたしますので今日はこの辺で」
(私がいくらで買ったと思ってるんだ?簡単には折れるものか。砂糖は・・・高級品なんだぞ!)
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「どうしたミエール食欲がないのか?」と伯爵が心配した。
「いえ・・・少しずついただきます」
「砂糖が入っていないと味がないな。仕入れ先が決まったのに税関で止められたらしいんだ。皇太子の許可が下りないのか。遅すぎるだろう」
「柔軟性が欠けているのですね。国民がこんなにも困っているのに・・・」
(なら初めから砂糖を独占しなければよかったのよ。高値で売ったりするから高級品になったっていうのに。高級品なんてほかにもあるじゃない。それを国のせいにするなんて)
「皇太子はなにを考えているんだか・・・」
(いまは貴族派のお嬢様だけど私がもし皇太子だったとしても・・・こんな貴族のことなんて考えないかも)
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「20倍ですか!?」とフラワーマウンテンの主人が驚くなか
「現在、お砂糖はかなり高くなっています」とアニーの兄アンドリューは言う。
「いや、でも・・・10倍でもかなり厳しいんだ・・・」
「主人は後のことを考えて値上げされているのですよ。あなたの利益にも繋がります」
「どういうことだ・・・?」
「20倍で大量に供給するのでその後はご自由にどうぞ」
「!」
「要は・・・30倍で売ってもそれ以上でもあなたの勝手です」
(30倍・・・30倍で売っても上級貴族は買うに決まってる!これはチャンス・・・!)と店主は考える。
「そのお砂糖・・・全部ください!!」
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数日後
「次は俺だ!」
「1人でそんなに買うな!」
「金額を上乗せするから俺にくれ!」
「俺もだ!」
「落ち着いて・・・そんなにたくさんありません・・・金額を言っていただければある程度は売れま・・・」
「俺だ!」
「いいや俺だ!」
(あの人たちを・・・可哀想だと思う必要はないわ)
第39話 感想
イシース公女の嫌がらせにも砂時計で切り抜けることができたようですね。