第29話 ネタバレ
オスカーから届いた手紙には『卒業が近いので手紙のやり取りは難しくなりそうです。お元気で オスカー』と書かれていた。
(どういうこと?いきなり?)
手紙を読んだアリアはクラッとする。
「アニー水を用意してちょうだい」
「あっはい!」
(なによ!オスカー!)
「お嬢様顔色が・・・横になったほうが・・・」
(オスカー!)
******
「お嬢様大変です!!ミエールお嬢様にもお手紙が届いたそうなんです!それで・・・婚約を申し込まれたそうです!」
水を持ってきたアニーが言う。
アニーの報告を聞き余計に気分が悪くなるアリア。
「内容を詳しく教えてくれる?」
「何度も嬉しそうに話していたので内容を覚えてしまいました。『いつか婚約式でミエールお嬢様にバラの花束を渡せると思うと楽しみでしょうがないです・・・』と・・・」
だれ・・・?
(オスカーが?)と不思議に思うアリア。
「公女様が書かれたに違いありません!」と怒るアニー。
「公女が?」
「オスカー様のミエールお嬢様への塩対応は有名です!しかし毎回、公女様に会うとこういった内容の手紙が届きます。公女様が書いたか無理矢理書かせたに違いありません!オスカー様はプレゼントのセンスがないはずです!」
(イシース公女ね・・・ミエールを影から支えているプレゼントイシース公女。会ったことなかったから忘れていた。オスカーを手にいれればいいと思っていたけれど公女は・・・オスカーでも敵わないのね。
公女は皇家にいくからオスカーのほうが権力があると思っていた・・・でも決定権を持っているのが公女なら・・・過去にオスカーとミエールが結婚したこともミエールが権力を手にしたことも納得がいく。
すべては公女の仕業だったのね・・・!どうしようオスカーがあんな手紙を送ったところで私とミエールの状況は変わらない)
「うっ・・・うわーん!!」と声に出して泣くアリア。
(どうすればいいの・・・!)
「お嬢様っ!お水でも・・・」
******
夕食時、ミエールは金色のバラの髪飾りを付けてきた。
「おぉ!美しい髪飾りですね!どなたから・・・?」とレインが言う。
「ミエールと婚約している者からいただいたらしい」と伯爵がこたえた。
「わぁセンスがありますね」
(あとで砂時計をひっくり返せばいいから・・・首締めていい?だからってこの怒りは収まらないけど)
はぁ・・・とため息をつくアリアはミエールの侍女、エマと視線が合う。エマはアリアを見てクスッと笑った。
(あんたも追い出してやるんだから見てなさい)
「さっきはどうされたのですか?急用だと言って急いで出ていかれたので驚きました」とミエールが尋ねた。
「税金のことで問題が発生したんだが・・・レインが解決してくれた」と伯爵が話す。
「レインさんがですか?」
「正確には主人のおかげですけどね。税関の者がいたので」とレインは言う。
「これくらいしかお礼ができず申し訳ないな。近いうちに主人もご一緒に招待させてくれ」
「こちらもそのつもりで日程を調整中です」
「会える日が楽しみです~」とミエールが話す。
(そんなに嬉しい?私なんて努力がすべて水の泡になったっていうのに・・・みんなはそんなに楽しいの?ミエールの首でも締めて戻ろうかな)
「そこでミエールお嬢様はなにかいいアイディアがございますか?」
「えっ?」
「また起こり得る問題だからな・・・」
「ですね。こちらにある在庫は首都のものだと考えられており・・・持ち出す際には再度税金を支払う必要があります」
「高価なものはその分税金もかかる・・・いつもは在庫が残らないように調整していたが今回のように繁盛したのは初めてだったからな」
(あぁ・・・カインが解決策をだして信頼を得られ二人の絆はより深まっていった・・・)
「深く考えたことはなかったのですが、レイン様がお父様に税関の方を紹介してみてはどうですか?そうすればすぐに解決できるかと思います」とニコニコとミエールは言う。
「紹介・・・ですか」
「ミエールは社交性があるんだな!」
(まったく・・・知らない相手に税金の処理をしてもらうとは・・・呆れる・・・)
「毎度人脈で解決するのならこの家はレイン様がいないとな~んにもできないわね」
「そんなこと・・・」
「私なら・・・首都近辺に倉庫でも作ればいいと思います。これなら簡単ですよね?」
「倉庫?」
「どういうことかね?」
「たいした意味ではありませんが・・・首都は物価も高いので首都近辺に倉庫を建てて・・・需要がある際に持ち出せばいいんじゃないですか?それなら首都以外であれば税金もそこまでかからないですし。この際もう倉庫で取引してしまうとか!個人で買い取れば税金だってかかりません。こんな感じですかね毎度レイン様に助けを求めるよりマシだと思って・・・」
「いまのアイディア素晴らしいです!」
「よく思いついたな!」
「でも倉庫を建てたらその分お金も人件費も・・・」ミエールが言う。しかし、
「伯爵様はこの先も商売を続けていかれるので、それを考えれば税金より安いです!」
(ちょっと考えれば伯爵でも思いつく簡単な方法だけど)
「毛皮の税金高いんですね・・・」
「やはり高級品なので・・・でもこれはミエールお嬢様が毛皮の流行について意見をくださったおかげです!でないと税金の話なんて出ませんよ~」とレインは話した。
「毛皮の流行・・・?」
「え・・・?」
アリアの母とミエールの反応にレインも不思議そうだった。
「えっへん、この話はよして乾杯でもするか20年産を持ってきてくれ!」
「はいっ!」と返事をして慌てて使用人が持ってくる。
アリアの母がチラッとアリアの方を見ていた。
(未来を知ってこんな風に頑張ったって・・・一番の問題を解決できてない。これじゃあただちょっと頭のいいお嬢様じゃない。このままじゃいけない・・・悔しい・・・)
******
「はぁ・・・」
(どうすればいいんだろう。オスカーに手紙のやり取りは続けたいと返事をしたけど。いい返事はこないだろう。さっきの倉庫の話だって私がしたところでなにも変わらないただこうして・・・この先も不安を抱えながら日々を過ごすのね・・・)
アリアは部屋のベッドで泣いていた。
第29話 感想
アニーにもプレゼントのセンスがないと言われてしまうとは・・・それにミエールが付けていた髪飾り、結局アリアと同じものが届いたようですね。