第12話 ネタバレ
(この人次元移動のこと知ってるの?だけどどうして?ここにあるどんな本にも書いてないし誰もそのことについて話せる人はいないのに。この人はいったい・・・)
(ゆっくりと獲物を狙う目つきだ。私はあなたの敵でも獲物でもないんだけど。私は公爵に関心なんてこれっぽっちもありません——なんて言ったところで絶対に信じないだろうし。
私を信用させる効果的な方法は・・・信頼を得るためには共感できる話題を作るのよ!)
どうすれば・・・と悩むバレリー。机に積み重なる歴史の本に気づき「セレニアさんが歴史の本を読む理由って突然来てしまったこの世界を理解するためでしょう?」と尋ねた。
「・・・!」
「初めて見る世界を知るために一番いい方法はその世界の歴史を知ることだから」
私も読んだたくさんの歴史の本を
「『ホーウィン』という性だけでなく『セレニア』という名前もつけてもらったものですよね?本当の名前はこの世界とはまったく違うスタイルの名前だから・・・でしょう?名前を・・・あなたの名前を教えてもらえませんか?」
「そうね、正式にご挨拶いたします。私は司馬一族の愛蘭 司馬愛蘭と申します」
セレニアは抱拳礼で挨拶をした。
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私は何を期待してたんだろう?今度こそは現実をしっかり見つめて生きていこうと決心したのに。自分の身に危険が降りかかりそうになるとすぐに逃げようとしてまた突拍子もない期待を抱いてしまった。
『司馬一族の愛蘭 司馬愛蘭と申します。よかったらランと呼んでください』
『自分を助けようとしてくれる騎士に向かって振り回したらしいわ!』
剣、抱拳礼、司馬一族の司馬愛蘭
この人がいたところは日本ではなくて——
「武林・・・のご出身なんですね」
「私がいた世界も知ってるんですか?」
「いえ全然知りません」
そんなのあり得る?武林だなんて・・・もっとも転生だってあり得ないことだけど
「では私はこの後予定がありますので失礼します」
逃げようとするバレリーにセレニアは
「もう?あのそれなら今度お時間あるときご招待しますのでお越しいただけますか?」と尋ねていた。
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(一瞬とんでもない期待をしてしまった。本当は味方だということを見せるために言ったのではなくて味方だということを確かめたくて言ったのかもしれない彼女があの予言どおり私に襲い掛かるかもしれない虎ではないことを特別な使命を受けて次元移動した善良なヒロインであることを私と同じ世界で生きてた経験を持つ人であることを)
セレニアとのできごとに悩むバレリーの前にお次はカイロスが登場する。
心が弱ってしまったんだわ。少しでも危険の少ないものを見つけたらすがりついて信じたくなってしまう。
「その・・・驚かせたなら悪かった今度はむやみに部屋に入ったりしないで外で待ってたんだ。この間の僕の行動が怖がらせてしまったんじゃないかと人に言われて・・・」とカイロスは言う。
「・・・いいえ昨日から何か用があっていらしてるんですよね?それなら今お話しましょう。今日は正式に私の部屋にご招待します」
(しっかりするんだ逃げないでちゃんと現実を見るんだ)
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「殿下とりあえずお座りください」
「わかった」
ちょこんと床に正座するカイロスに「ソファーに座るんだよっソファーに!!」と取り乱すバレリーだった。
第12話 感想
バレリーの予想が外れてセレニアから逃げて来たわけですが今度は公爵との対面です。何とも悩みがつきない感じですね。