第26話 ネタバレ
ディエリゴを名前呼びするエレニカにエウレディアンは「ディエリゴ・シュマルトが名前で呼んで良いと言ったのか」尋ねる。
「ひょっとしてこれって——
嫉妬ですか?」
エレニカの言葉に「私が?誰を?」と唖然とするエウレディアン。エウレディアンの反応に「そんなあからさまにあり得ないって顔しないでください 意外と傷つくタイプなんで それに名前で呼んでもいいじゃないですかディエリゴも大丈夫だって言ってたし!」とエレニカは言う。
実はタメ語で話す代わりに名前で呼ぶことにしたんだけどね。
「合意済みなら構わないだろう・・・まさかディエリゴも姫を名前で呼んでいるわけではないだろうな?」
「あ・・・はい私こう見えても王族なので・・・」
エウレディアンは「そうか」と返すが、なんだか腑に落ちない表情だ・・・一体何が気に入らないんだろう?と思うエレニカ。
「——名前で呼んでみますか?
エレ二ノビカ ちょっと長いので短くしても大丈夫ですよエレニカ エニカ・・・エニ この3つの中でお好きなのをどうぞ
普段家族から呼ばれてた愛称なんですけど特別に呼ばせて差し上げます!」
(・・・どうやらベルゴットでは親密な仲でなければむやみに名前や愛称で呼ばない文化があるということを知らないようだ
まあ・・・他人への警戒心が全くないから知っていたとしても気にしなかっただろうがな)
「・・・姫はベルゴットについて知らないことがまだまだ沢山ある」
「え?」と聞くエレニカに「断るという意味だそれより以前私が言ったことを覚えているか?」と尋ねるエウレディアン。
チッ・・・全然通用しなかったと思ったエレニカ。「以前っていつのことですか?」と返すエレニカにエウレディアンはため息をつき「・・・・・・私が気をつけるしかないようだな」と言う。
一体何なの?さっきから何か変だ・・・まさかお父様(←エウレディアン)のお気に入りの司祭と仲良くするのが気に食わないとか!?お父様のケチー!と思ったエレニカは「ちょっとぐらい仲良くしたっていいじゃないですか!だいたいいくら待っても会いに来てくれないから——」と話すと
「忙しかったから仕方ないだろ」と言われてしまった。これじゃ忙しい人に駄々こねるワガママな子供みたいじゃん!「冗談です・・・わたしなんかと遊んでる暇なんてないはずなのにこうして拉致に応じてくださっただけでも感謝してます」とエレニカは話す。
「分かっているではないか」
「あーもー!」
話をしているとエレニカの手に急にビリビリっと痺れが起きた。エウレディアンは何かに気づき「危ない!」とエレニカを抱きしめる。2人の横をものすごい勢いでかけていく者がいた。その者は去る時に、丸い小さなものを町に落としていく。
(・・・黒のビー玉?あの人が落としたのかな?)
エウレディアンに手を握られていたエレニカはさっきの電気が走るような痛みは無くなったけど・・・一体何だったんだろう?と思った。
「あんなに急いじゃって急用でもあったみたいですねおかげでぶつからずに済みましたありがとうございます」
へへっと笑うエレニカにどこか困った様子のエウレディアンは
「・・・・・・
こういう時は姫が鈍感で良かったと思う」
エウレディアンの言葉に「バカにしてるんですか?」とにっこり笑うエレニカ。「いや決して悪い意味ではない」と返すエウレディアン。「いやどう考えても悪い意味でしょ?」と引き下がらないエレニカ。
本当のことを言ったら不安になるだろうから・・・と気遣うエウレディアンは「姫が気にする必要はない」と言う。
・・・ますます気になる わたしが何か見落としてるのかな?特に変わったところはないと思うんだけど・・・とキョロキョロ街を見渡すエレニカは無意識に体を抱え手が少し震えていた。
エレニカの顔付近にエウレディアンが指先でトンと軽くたたくと黒い靄がエレニカから消えていく。
「そろそろ行くか?」
エレニカはこくりと頷く。
ユゲール広場はディエリゴが言ってた通り一つひとつが巨大な芸術作品のようだった。地面のタイルから中央の大きな噴水とオオカミ像・・・そして広場を囲っている大きな壁に描かれた壁画まで・・・
屋台で焼き鳥を買うエレニカにエウレディアンはピンク色のわたあめをみながら言う。
「姫はあっちのわたあめの方が似合うと思うが」
「ヒドーイ!からかわないでくださいよ~」
「髪の色が気に入らないのか?」
すねるエレニカの前髪を触りエウレディアンは言う。
「そうじゃなくて・・・」
(お父様にセクシーで大人っぽいソルレアの髪と比べられたくないから・・・)
「とにかくわたあめは食べたくありません!」
「そうか姫が嫌なら仕方あるまい」と話すエウレディアン。エレニカはフルーツの串も買い、一つエウレディアンにすすめるがエウレディアンは首を横に振り断る。
エウレディアンは黒のビー玉のようなものを見つけると、睨みつけ足で踏み壊していた。
「あの・・・」とエウレディアンに声をかけるエレニカにエウレディアンは「どうした?今度はまた何だ?」と尋ねる。完全に心ここに在らずだ・・・さっきから他のことに気を取られてる感じなんだけどどうしたんだろう・・・?と思うエレニカ。
「姫がお金を持っていた方が良さそうだな」とエウレディアンは言い懐からお金を出そうとしてきた。いや何か買ってって意味じゃないから!と慌てて「だ・・・大丈夫です子供じゃないんだから!」と止める。
「ところであのオオカミ・・・背中に十字架を背負ってますね」
「ん?」
「ほらあのガオ~ってやってるオオカミ像のことですよ!遠くからは見えなかったけど背中に十字架が——」
「あ・・・あれかオオカミと十字架はベルゴットの象徴だ平和と繁栄の神ラウルスは時折オオカミになって地上に降臨すると言われている
オオカミはラウルスの血族であるベルゴット皇族を象徴し——背中の十字架は皇族の中でもラウルスの神聖力を最も強く受け継いだ者・・・つまりベルゴットの皇帝を象徴する」
エウレディアンの話を聞き「へぇ~じゃあ陛下を・・・いやお父様を——」と言うエレニカに「こら!」と窘めるエウレディアン。
「——あなたを象徴してるんですね」
第26話 感想
街で見かける黒のビー玉なんか怪しすぎですよね・・・ソルレアと何か関係がありそうです。