第38話 ネタバレ
「こうやって師匠の目を見て訓練するんです」とセレニアが顔を近づけてくる。
「顔近すぎ・・・もういいから・・・」
グイッ
「!?」
バレリーは肩を突然後ろに引っ張られた。
「いったい何をやってるんだ?」
「カイロス?」
「動体視力の訓練法についてお話してたんです」
「バレリーは近くに寄ることを嫌がるんだ今すぐ離れてくれないか?」
「いえ、それほど嫌ではありませんけど・・・」
バレリーが答えるとカイロスはショックを受けた様子だった。
「僕が靴を履かせようと近寄った時はものすごく嫌がっていたと思うが・・・」
「もしかしてもう平気なのか?」
「あ・・・あああああっ!!」
カイロスが顔を近づけてきたのでバレリーは頭を叩いてしまった。
「カイロス?た・・・たんこぶがっ!」
「まったくおかしいな・・・自分からは近づいても平気なくせになぜ僕だけ・・・」
「そんなふうに顔を突き出したら誰だって驚きますよ」
「すみません大丈夫ですか?」
「ところでどうしてここへいらしたんですか?厨房は公爵様が偶然通りかかるようなところではないと思いますが・・・」とセレニアが尋ねる。
「それは・・・」
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【カイロスの回想】
数分前、カイロスの部屋
「・・・殿下?ずいぶんお悩みのご様子だと思ったら・・・」
「ただ悩んでるだけでは答えが出ないと判断したから本を読んでいた。この本を読んだところピンときた。王やバレリーから信頼を得られる方法について」
カイロスは『公爵と政略結婚その終わりなきトンネル』という本を補佐官2人に見せた。
(人の気持ちなんて気にしたこともなかったお方が愛と友情を守るために努力しておられるなんて・・・!だけど・・・あんな努力でいいのか?)とビクトールは悩む。
「とにかく僕は必要な人なんだと示さなければならないという結論に達した」
「そういうことでしたらすでに証明されたと思いますが・・・こういうことは相手の気持ちが問題なのです客観的に見ているだけでは意味がありません。
その本の中で主人公の男はどのシーンが一番カッコいいと思いましたか?」
「主人公の公爵が・・・兄を殺すことを決断するシーンだ。普通なら兄弟だからと悩むはずなのに躊躇せずに悪を成敗したんだ。その決断力がカッコいいと思った」
「王の前でそんなことを言ったら反逆者だと思われますよ!」
「王の信頼を得ることはセレニアお嬢様にお任せすれば問題ないと思いますので殿下は少しでもボルシェイク様のお傍にいらっしゃるのはいかがでしょうか?」
ビクトールが『そんなことより自分の将来を考えろ』と遠回しに強く訴えた。
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「というわけで少しでも長く傍にいたいから使用人たちに聞いて探したんだ」
カイロスが体育座りで2人を見上げて言う。
(どうしてこんな同情を買うようなことをするのかしら?まるで捨てられた子犬みたいに・・・)とセレニアが思った。
「わかりましたそれならここでおとなしくしててください」
(あれ?捨てられた子犬じゃなくて忠犬なのかしら?飼い主がいるから問題ないわよね・・・?)セレニアは考え直す。
「ではランさっきの続きですよ!」
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「どうにかこうにか形になりましたね!ランも初めて作る人とは思えないくらい上手にできてますよ!お料理のセンスもあるんですね」
「そんなはずありません。私がお料理をするといつも人の命を危険に晒してしまってたんですよ」
「またまたご謙遜を!これくらいできれば今度ムレアにも上手に作ってあげられそうですね!とても素晴らしいです!このりんごタルトすごく役立ちそうですね!」
(そうだ!)
「次はこのりんごの皮を剥いて・・・」
「おい・・・そのりんご僕が剥いてもいいか?」
「カイロスが・・・ですか??」
「そうだ僕は刀を扱う者だからこういうのは朝メシ前だ」
カイロスがテキパキとリンゴの皮を剥き兎の形にした。
「わぁ可愛い!だけどこれはこうやって剥くんじゃなくて・・・」
「こういう剥き方ではタルトには使えないんですけど。よく見ててくださいねりんごはこうやって剥くのです」
今度はセレニアがシャシャシャとプロ並みに剥く。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
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ムレア・クァルテ16歳 失恋の痛みをダラダラと過ごすことで癒しているところ
「・・・レア!ムレア!!」
「何ですか?突然」
「お前、公爵様の婚約式でいったい何をやらかしたんだ?」
父の言葉にムレアはビクッとする。
「・・・え?」
「お前って奴は・・・!まったくでかしたぞ!!」
(??)
「ボルシェイク公子がお前の力あふれる姿に一目惚れしたそうだ!!」
(はぁ??)
第38話 感想
バレリーに頼まれてムレアのことを調べていましたが相手に誤解されてしまったようですねwww