第8話 ネタバレ
「ならばこの場で受けて立とう!私はここから逃げはしない!」とユリアが言う。
「と・・・とんでもありません・・・!そのようなことは・・・」
フェーズ公爵は腰を抜かす。しかし、ユリアの顔色をうかがい慌てて土下座した。
「出過ぎた真似を致しました」
(くそ!いつの間に正気に戻ったんだ。昨日飲ませた薬の量が少なかったのか!?)
(今はこの辺にしておこうかな)
「確かにお前は最も忠誠心の高い部下ではあるな」
「・・・!ええ、もちろんです!陛下のために長いこと尽くしてきたではありませんか!」
「わかってるぞ。ただからかってみただけだ。」
(こちらの意図も把握できてないのか)
「今まで苦労をかけたから1日だけの休暇で足りないだろう」
「陛下・・・!」
「近いうちに褒美をつかわす。安心して3日ほどゆっくり休みたまえ」
(まだ戸惑っているようね。あの顔をした人間はどこかが欠けているのかしら。そもそもあんな奴に内政を任せたのも偶然だったし
先代のフェーズ公爵は後継者が不在のまま亡くなってしまって唯一の血縁だった彼が爵位を受け継いだせいでしょうね・・・戦争にばかり気を取られこんなことになるなんて。とにかく彼が休んでる間に準備を急がなきゃ)
「フェーズ公爵、お前なしに国を治めることはできぬ。わかってくれるな?」
「も・・・もちろんでございます!陛下がお呼びであればどこにでも駆け付けます」
「ああ、頼りにしてるぞ」
内心ユリアはイラッとしていたが笑顔でフェーズ公爵に言う。
「ええ、お任せ下さい!」
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(はっ!無理に笑ったせいでムカムカする。あの顔を長く見たせいかも・・・ふぅ・・・興奮しすぎたわ。今は腹が立ててる時間ももったいない。まずは公爵が何をやっていたのか把握してさっさと片付けなきゃ)
「フレーナ」
「はい!」
「侍女たちを連れてフェーズ公爵の執務室にある書類を全て持ってくるように」
「かしこまりました」
「ああ、もちろん適当に理由をつけてな」
「もちろんでございます」
(なんだか申し訳ないわね・・・彼らが従ってるユリアは実は彼女ではないことや彼女の体を勝手に乗っ取ったことも全部・・・だからこそ頑張らないと)
「そこのお前」
「はい!」
「今回の処刑に関する書類を持ってこい」
「はい」
「次はフェリックス」
「はい!」
(17歳の少年ってこんなに可愛かったかしら・・・変なものまで見えてきた・・・)
ユリアは懐く少年に犬耳と尻尾が見えてくる。
オレンジ色のくせっ毛に黒い瞳を持った少年はユリアを見つめる度にいつもキラキラしていた。彼女に憎まれることを恐れいつも自分は害がない存在であるかのように。
しかし、それはあくまでユリアの前でのこと・・・それだけじゃ決して大魔法師にはなれない。ユリアの前でのフェリックスは大人しい子羊であり侍女たちにもある程度は親切だったがそれ以外の者には容赦しなかった。
ユリアに無礼な言動を働いた貴族に地獄のような悪夢を見せた。その貴族は一週間と耐えきれず。
『偉大なる皇帝陛下!先日の無礼をお許し下さい!』
こんな貴族の態度にフェリックスは
『やっと陛下の偉大さに気づいたようですね』
・・・と天使のような笑顔を見せるだけだった。
(ユリアに対しては盲目的な人でよかったわ)
いくら皇帝の側近とはいえ貴族に手を出したのは処罰されるべきことだが報復を恐れてこの件について触れる者はいなかった。
(ユリアもわかってて黙ってあげてたもんね。自分の仕業じゃないふりをしてるのも可愛かったし誰も少年を告発しなかったことも大きかった)
「フェリックス、頼みたいことがあるんだが」
「なんなりとお申し付け下さい!」
「まずはフェーズ公爵を監視し彼に繋がる連絡も遮断してくれ」
「お安いご用です!」
「無論、公爵に気づかれないようにな」
「!」
「もちろんです!」
第8話 感想
フェリックスは可愛いけど主人以外には容赦ないところもあるみたいですね。